同人誌を読み終わると、本文最後のページに「発行者、印刷所」などの情報が載っていますよね。これは「奥付(おくづけ)」といい、同人誌を発行する際に、必要なものです。
しかし、なぜ奥付が必要なのか、そしてなぜその項目が必要なのかと聞かれれば「他のサークルさんがそうしているから」と答える人が多いのではないでしょうか。
ここでは、奥付の意味と必要性を解説し、おすすめの書き方などをご紹介します。
同人誌に奥付が必要な理由
まず、なぜ同人誌を発行するときに奥付が必要なのか、についてです。
奥付は「責任の存在」です。本の発行に対して責任を持つという意思のあらわれであり、同人誌を楽しむためのルールです。奥付があることで、どこの誰が作った本であるかが分かります。
奥付がしっかり作られていないと、「責任が無い」と見なされてしまいます。コミケットアピールでも重要通達事項に「頒布する本には責任の所在を明確にするため、必ず奥付を入れてください」とあります。
自分はルールを守って同人活動をしています、という責任所在の意思表示のためにも、奥付は必要なのです。
奥付に書くべき6つのこと
同人誌の奥付に必要な項目は、以下の6点です。
- 本のタイトル
- 発行者(ペンネーム)
- 発行(サークル名)
- 発行年月日
- 連絡先
- 印刷所名
この6つが明記されていれば、まず問題はありません。項目の掲載順は決められてはいませんが、この順であるサークルさんが多いようです。
それでは順番に、おすすめの書き方とともに見ていきましょう。
本のタイトル
まずは「本のタイトル」です。一般書籍は、タイトルと作者名をひと目で認識させるために工夫がされていることが多いですが、同人誌は特にそのような決まりはありません。中には、表紙のイラストやデザイン性を重視し、タイトルがはっきりと分からないものもあります。
そのため、「この本はこういうタイトル」と、タイトルと表紙をしっかりと結び付けて認識させる要素として、奥付に「タイトル」の表記は必須なのです。奥付にタイトルが明記されていないと、困ってしまうことが多く出てきます。
- 買い物を人に頼むときに(頼まれたときに)最終確認ができずに困る
- 印刷屋さんが困る
- 委託先の書店さんが困る
「○○が××してる全体的に緑色っぽい表紙のやつ」などでも話は通じることがありますが、最終的な確認は奥付です。以下の項目も含めて、読みやすいフォントで明記するようにしましょう。
本の著者(発行者)
同人誌は、個人で作り、出版社を通さずに個人で発行しているケースがほとんどです。そのため、「著者」=「発行者」となります。しかし、2人以上で構成されるサークル、団体の場合は、以下のようにするのが良しとされています。
- 「発行者」とし、とりまとめた代表の名前(ペンネーム)のみを記載する
- 「発行者」であるとりまとめ代表の名前と「著者」を別項目で記載する
しかし、明確なルールが存在しているわけではないので、「誰が出した本なのか」さえはっきり分かれば良いでしょう。
発行元(サークル名)
合同サークルの場合は、代表サークル名、または両方書くようにすれば間違いはありません。個人的に発行したアンソロであれば、代表者のサークル名を記載するのが良いでしょう。プチオンリーやオンリーイベントでのアンソロ・パンフなどでは、主催のサークル名や主催団体と併記することが多いようです。(「○○プチオンリー実行委員会・代表○○」など)
イベント参加をしていればサークル名はあるはずですが、まれに「ただ個人的に自分用に出しただけ」ということもあるでしょう。そのような時は、「屋号」としてつけてもよいですし、著者名がはっきり書かれていれば特に必要はありません。
発行年月日
頒布開始のイベントの日付であることが多いです。いつ発行した本なのか明確にすることで、自分でも整理ができ、買い手さんにとっては「この本はまだ持っていない」という目安になります。
また、トラブルにあったときに対応できる要素にもなります。例えば、本の内容をトレースされたり、内容を完全に模倣されたときなどに「先に発行していた」の証明にもなるのです。
初版の発行日だけではなく、サークルさんによっては二版・三版など、重版をした日付を入れている場合もあります。重版をよくするサークルさんは、サイクルの目安になるので、自分の覚え書きのためにも、日付を入れるることをおすすめします。
連絡先
- 有効なメールアドレス
- WEBのURL
- TwitterなどのSNSのアカウントIDだけ
- PixivのIDだけ
連絡先として必要なのは「何かに会員登録をしなくても連絡が取れる状態の連絡先」であることです。そのためSNSやPixivなどのアカウント名だけの表記は、不適当とされています。
しかしこれらも、併記するのであれば記載は可です。現代において、Twitterでリプライを送るのは、現実的に考えると、連絡先として最も手っ取り早い手段になっています。「メールアドレス+アカウントがあればSNSなどのアカウント」が、有効であり、連絡が取れやすいものと言えるでしょう。
印刷所
コピー本であれば、印刷所の表記は必要ありません。しかし、印刷屋さんにお願いした場合は、印刷所さんのお名前を明記しましょう。
ここで気をつけたいのが、「株式会社」の位置、漢字一文字の違いで、まったく違う会社になってしまうことです。よく間違いがある印刷所さんを例に挙げます。
- 株式会社グラフィック ×グラフィック ×グラフィック株式会社
- 大陽出版株式会社 ×太陽出版株式会社 ×太陽印刷株式会社
- 株式会社栄光 ×株式会社栄光堂印刷所
- 株式会社日光企画 ×株式会社日光印刷出版社 ×日光印刷株式会社
また、初版と重版で印刷所を変えた場合や、表紙と本文が別々の印刷所だった場合も気をつけましょう。
以上6点が、奥付に明記しておけば間違いはない事項です。
必要ではないけれども、あったらいいもの
後記・あとがき
同人誌本編を読み終わって、その余韻だけで終わりたい派と、後記を読みたい派に分かれるようですが、Twitterのアンケートで言えば「後記は読みたい!」「あれば嬉しい」という人の方が多数です。
後記に至るときはたいてい屍になっていることが多いものですが、それはそれとして、リアルな記録として楽しめます。そんな余裕は1分たりとも無い、という場合は、事前に用意しておきましょう。
- その本を書いたきっかけ
- 書いている途中のエピソード
- BGM、イメージソング
- 本文で書ききれなかったこと、設定
- カプへの語り、作品への愛など
特に達者な文章をつづる必要はなく、むしろそのままの語りの方が楽しいという意見が多いので、深く考えずに、メモ代わりにでも書いてみてはいかがでしょうか。
感想用のQRコード
本を出したからには反応が欲しい!感想が欲しい!と思っても何も不思議ではありません。しかし実際のところ、感想は都市伝説レベルになかなかもらえるものではなく、積極的に何か工夫が必要なものです。
その工夫のひとつが「手軽に感想を送りやすいツールを整える」です。SNSでは恥ずかしくてリプライを送れない、メールで送るには語彙が無い、直接というのも機会がない・・という人向けに、匿名のメッセージサービスが多く出ています。
匿名ということで、良い面だけではありませんが、気軽な送りやすさが人気で、そのQRコードを奥付に設置しているサークスさんも、増えてきています。どのようなものがあるか、ご紹介します。
これらのQRコードを奥付に設置することで、以前よりも感想や反応をもらえることが増えた、と多くの声があります。
まとめ
同人誌の奥付は、本を発行するにあたっての必要な事項をきちんと書き記す場所です。
- 本のタイトル・・正しくはっきりと!
- 発行者(ペンネーム)・・代表者名で
- 発行(サークル名)・・複数のときは代表サークルや合体名でも
- 発行年月日・・発行イベントの日付が一般的
- 連絡先・・メールアドレスやサイトURL+SNSで
- 印刷所名・・表記間違いに注意!
奥付をしっかり作って、同人活動を楽しく、責任あるものにしましょう。