印刷所さん

「紙に出す、まずはそこから」-サンライズさんロングインタビュー

漫画・イラスト・小説などの創作作品を、SNSや各種投稿サイトへ気軽に投稿できる昨今、「紙の同人誌」にするというのはハードルが高いのでは?と思われる方もいることでしょう。

しかし、自分の作品が本という形になったときの喜びや満足感は、一度でも本を作ったことのある方なら忘れられないものなのではないでしょうか。同人誌を作る目的は人それぞれですが、本にする、その体験はぜひ味わってほしいものです。

そこで今回は、同人誌印刷所として歴史のあるサンライズパブリケーション株式会社さんにお邪魔してきました。お話を伺ったのは、サンライズ東京支店の田中さんです。印刷所さんとしての考えから、同人誌を愛する同士としての話まで、大いに盛り上がりった様子をお届けします。

取材協力:サンライズパブリケーション株式会社(本社・大阪市)
https://www.sunrisep.co.jp/

作品を「紙」に出してみて分かること

――SNSや各種投稿サイトなど、WEBで作品を発表して見てもらう機会が、この10年くらいの間にとても増えてきたこともあり、私の周りでも、絵や小説を書くのは好きでも本にはなかなか…という人が多いです。

印刷所がこう言うのも何ですが、まずは、いきなり印刷・製本された本ではなくてもいいと思います。極端な話、ご家庭のプリンターでプリントしてみたり、最近ではネットプリントなどもありますよね。何でもいいんです。紙に出す。そして、折ってステープラーで綴じてみる。そうすることで、作品が「物の形」になりますよね。

――紙に印刷されると、形になることで少し第三者的というか、違う目で作品を見られるような気がします。

あれは不思議ですね。やはり物体としての力が強いということなのでしょうか(笑)ページものの本ではなく、写真プリントのようにカラー出力された一枚ものでも、手元に残るとより愛おしい存在になりますね。

作品を紙に印刷することは、例えば原材料だったものを料理するようなものだと考えています。画面にあった素敵なデータの作品を「このインクを使って、この紙で、この加工で」ってひとつずつ考えて形にしていくんです。

自分だけのこだわりを形にする!装丁の楽しみ

――本を形にするのが料理であれば、装丁は個性を出せる味付けという感じでしょうか。時間と予算次第ですが、装丁を考えるのはとても楽しいです。

最初は自宅プリンター、そしてコピー本でもまずは紙に出して、本にしてみる。少しずつ慣れてきたら印刷所に発注してみる、その中で個性を出すためや、作品により味をつけるために考えて、ためして頂きたいのが装丁です。

まずはシンプルに、セットとしてご用意しているプランなどで印刷をするところから始めてもいいですし、1からお好きなように作り上げていくのも楽しいですね。当社でも、特殊装丁のプランなどをご用意していますよ。
※例:2019年3月20日までの「ストロベリー×チョコ大作戦」、オンデマンドのホワイトトナーを使用したプランなど

お客様の作品データや原稿を本という形にするお手伝いができるのは、とても嬉しいことです。こだわりの詰まった「本」にするためのお手伝い、それがやはりこの仕事のやりがいですね。

はにわくん
はにわくん
特殊紙に特殊加工たかぶる…

パグくん
パグくん
白トナーめちゃくちゃ可愛い

作り手さんのイマジネーションはすごい!

――装丁を考えるのは楽しいのですが「こういうことはできるのかな?」と頭の中にはあるけれど…ということもあります。

そのような時は、ぜひご相談ください。オプションをサイトにもいろいろ載せていますが、難しそうなことでも「これとこれを組み合わせればできる」ということもありますし、お客様と一緒に考えていかれたらと思います。

社内では考えもつかなかったことが、「こんなことはできますか」というお客様からのご提案によって、定番のオプションになったこともあるんですよ。

印刷に長く携わり、たくさんの同人誌に触れていても、お客様の「こうしたい」という想像力や発想力にはいつも驚くばかりです。パックにあるもので終わることなく、作品をより良く、魅力的に形として残せるお手伝いができたら嬉しい限りです。

――こういうことができたらいいな、と自分の中だけで完結させずに、それができるかできないか、相談してみるといいんですね。

サンライズさんのサイトでは、これまで印刷された素敵な装丁の同人誌を紹介されています。「こんな風にしたいな!」という想像力をかきたててくれるご本ばかりです。見ているだけでも楽しくなるので、ぜひご覧ください。
作品紹介

イメージを形にするための変わらぬ努力ー職人の技術

――デジタル入稿、デジタル処理・印刷が主流となっていますが、アナログの受け付けも変わらずにされていますね。

アナログの紙原稿でのご入稿も、ずっと受け付けています。データとの混在も可能ですよ。※混在の場合、念のため事前に相談を
紙原稿でのご入稿のときは、紙原稿をスキャンし、ゴミ取りをするだけではなく、紙原稿とデータを見比べながらよりよく印刷がされるように調整をしています。

――データ上での職人技術ですね。周りでも、アナログの線にずっとこだわりたいという人は一定数いるので安心できます。

データでも紙原稿でも、作品をより良い形で、作り手のお客様の想像どおり、またはそれ以上の出来になるようにお届けしたいです。例えばデータどおりに印刷をしても、それがイメージと違うということもあります。

ここから先は職人技術になってしまうのですが、肌の色や全体のイメージなど、大きくデータをいじることはしませんが、よりイメージされるものに近いものができるように、努力しています。

――特に色に関しては難しいですよね。本文も含めて、サンライズさんの印刷はとても綺麗だと評判も高いです。

ありがとうございます、印刷技術に関しては常に努力をしています。どのように刷られるのかご心配がある場合は、本文試し刷りサービスをご利用いただければ安心ですよ。

一般的な商業印刷では、カラーの印刷は「175線」という線数でされていることが多いです。この線数は、高くなればなるほど高密度でシャープな印刷の仕上がりとなります。


サンライズさんではカラーAMスクリーンを200線、FMスクリーンというモードでは700線の高精細印刷によって、綺麗なカラーの仕上がり、本文の再現力を誇っています。ぜひサンプルを確認してみてください。

はにわくん
はにわくん
AMスクリーンは、透明素材や特殊紙などのでこぼこのある用紙への印刷に向いているよ

パグくん
パグくん
どういう風にしたいのか相談してみてね!

本を作ったらイベントに!即売会ならではの楽しさ

2020年の東京オリンピック開催決定により、有明・国際展示場の使用が大きく制限されることになりました。それにともない、2018年末ごろより、同人誌即売会の開催ホールやイベントスケジュールなどがいろいろと変わってきています。

――正直、2020年問題は大きいですよね。

印刷会社としても、とても大きな問題です。イベントスケジュールがこれまでと変わってきますので、人員的なものも含めて流動的な対応が必要になってきます。

国際展示場・東館使用不可など使用ホールの変更の他、2019~2020年は、例年大きなイベントが行われていた日程とは大きな変更がある予定が各社から発表されています。イベントに参加を考えている方は、スケジュールを早めに確認しておくことをおすすめします。

――作り手としても、本は出したいけれどもイベントがもし長期間無くなるとなると、本を出しても、書店さんに頼るか自家通販ということになってしまいます。

それでも本を出したいと思っていただけるのはありがたいです。しかし、同人誌はやはり、イベントに行って手渡しで頒布したり作家さんから直接買うのが楽しい、というのが大きいと思います。もちろん環境によってはイベントに行かれないこともありますが、イベントでしか味わえない楽しみは、ぜひ味わって欲しいです。

――「作品を本という形にする」から一歩進んだところですね。朝会場に行って、机の下に搬入されている新刊のダンボールを開ける瞬間は、いつもわくわくします。

作品を形にして、なおかつ直接頒布をすることでしか味わえない気持ちですよね。そのような、イベントに行って本を頒布する楽しみを応援したい、と関西にある印刷会社で力を合わせて、共同で同人活動支援の企画を立てています。

関西同人活動支援会カンドウエイト

サンライズパブリケーション、バンビアシスト、関西美術印刷、HOPE21、くりえい社、おたクラブ、K9、オレンジ工房、ノベルティ市場、の9社さんで企画された共同事業

――イベントとしては、2019年6月2日、味覚糖UHAでのアイドルマスターSideMオンリーですよね
K@N-DO!FES

まずはこのイベントを成功させるために全力を尽くしています。印刷事業と即売会は切っても切り離せないものですが、不慣れながらも経験のある方々にお話をうかがったりしながら確実に事業を進めています。

――これ以降、いろいろなジャンルでオンリーが開かれたら盛り上がりそうですね

より身近に、気軽に相談できる存在にー店舗移転

――以前サンライズさんが新宿にあった時、直接入稿でお世話になりました。その場でデータをチェックしていただいて、表紙の用紙を相談しながら選ぶなど、とても安心できたのを覚えています。

その場で心配事を解消できるのは、直接入稿ならではの利点ですね。今でももちろん店頭でのご相談、入稿を受け付けていますが、2019年の3月22日に東京支店はより身近にご利用しやすくなるために、移転をすることになりました。※移転済みです!
サンライズさん移転のお知らせ

――池袋アニメイトに行ってそのまま立ち寄れそうで、とても便利な場所になりますね。

よりお気軽に、印刷の相談以外でもお立ち寄りいただければと思います。店頭での発注の他、受け取りやサンプルの展示など、いろいろと便利に使っていただけるような店頭にする予定です。5月からは東京支社は土曜日の営業を開始するので、サービス形態がいろいろと変わってきます。

はにわくん
はにわくん
土曜に池袋で受け取って、日曜そのままイベントへ…

パグくん
パグくん
悪い顔になってる…

――すぐに入稿するしないに関わらず、見本を見たり紙に触ったり、スタッフの方とお話をすることで「本出したい!」と気持ちが盛り上がるかもしれませんね。

わくわくする本作りのお手伝いを!

――今、力を入れられている商品はどのようなものですか?

オンデマンドの特色トレペ帯です。


https://www.sunrisep.co.jp/05_option/option_torepe_obi.htm

半透明のトレーシングペーパーに、よく映える特色とスミの2色刷り印刷で、文庫・B6・新書・A5の本の帯として使っていただけます。特に小説の場合、キャッチコピーや印象的なフレーズを目立つように入れたり、カバーや表紙と合わせてデザインの一部としていただくこともおすすめです。

――トナーの色がネオンピンク・ネオンイエロー(と、白トナー)ととても華やかなので、本体やカバーがシンプルでもとても目立つデザインになりますね。

幅が最大でタテ130mmまで使えるので、メインのデザインとしても使えますね。アイデア次第でさまざまにご利用いただければと思います。
それから、グッズではオンデマンドのクリアファイルがとても綺麗に仕上がりますよ。
オンデマンドクリアファイル

――チケットホルダーやクリアファイルも10部から作れるんですね。本もですが、少部数でも作れるオンデマンド印刷はとてもありがたいです。

オフセット印刷、オンデマンド印刷、グッズ、イベント面からの支援など、総合的に同人活動を支援できる存在になっていかれたらいいなと考えています。

それから、クリアトナーの印刷も楽しいですよ。地模様として使うと可愛いですね。使い方によってはニス盛りのようにもできます。

はにわくん
はにわくん
ひえっこれは楽しい!

同人誌作りを総合的に手厚くサポート!

同人誌を印刷するだけではなく、本そのもの、同人誌の文化、そして作り手さんの「好き」を形にすることを愛しているサンライズさん。長い歴史と多くの実績があるからこそ、同人誌作りに慣れた人も、初めての人も安心して相談できる印刷所さんです。

同人誌が好きというお気持ちが、お話をさせていただく中でとても分かり、作り手としても嬉しい気持ちになりました。

綺麗だと定評のあるオフセットのカラー印刷、少部数や何か楽しく新しいことをしたいと思い立った時にすぐにできるオンデマンド印刷。想像力を形にするために、「こうしたいな」と悩んでいることがもしもあれば、どんどん相談をしてみてはいかがでしょうか。

サンライズさんは、大型のイベントではよくブース出展されていらっしゃるので、そこでサンプルを頂いたり、直接お話をうかがったりすることもオススメです。

大変お忙しい中、貴重なお時間をたくさんいただきましたサンライズ様、ありがとうございました。