小説同人誌向けの本文用紙選び
長い時間、文字を目で追うには、クリーム系の薄手の書籍用紙が良い、とされています。しかし同人誌ですから、基本的には「好きな用紙でいい」でいいのです。とにかく厚くしたい、色のついた紙を使いたい、この紙を使ってみたい、どうしてもキンマリの○kがいい、など、好きな用紙で好きな装丁で作るのが一番です。
- 「このくらいの厚さだとどうしたらいいかな」
- 「この紙ってどんな紙だろう」
- 「書籍用紙と言われてもイメージがわかない」
- 初めてだからとりあえず何もわからない
このような場合の参考にしてください。ページ数によっては、用紙選びによっては読みにくくなってしまうこともあるので、本のサイズ・ページ数に適した用紙選びをするために、特徴などを知っておくことをおすすめします。
書籍用紙
近年、小説本を印刷するのに特化した用紙を取り扱う印刷所さんが増えてきました。「書籍用紙」であればたいていクリーム色がかった薄めの用紙なのですが、さらさらとしているもの、ラフな手触りのものなど、それぞれに違いはあります。
多く取り扱われている書籍用紙の特徴をご紹介します。
淡クリームキンマリ
北越紀州さんの代表的な書籍用紙。上質紙ベースなのでつるつる、すべすべしています。同人誌で使えるクリームキンマリは90kが多いですが、90kでは100~120ページ以上の厚い本には不向きだと言えます。重いうえにコシがあり、特に厚い文庫ではめくりにくさを感じてしまうこともあるためです。下の表を参考にしてください。
- 62k・・200~300ページ超えの厚めの本に
- 70・72.5k・・オールマイティに使いやすい厚み
- 90k・・100ページ未満や、コピー本にもおすすめ。A5に特におすすめ
上質紙なので、インクのノリも綺麗で8ポイントの明朝でもくっきりと出ます。オンデマンドに使用しても、文字なのでさほどテカりは気になりません。
書籍バルギー
大陽出版さん、丸正インキさんで使えます。上質110のくらいの厚みがありますが、とても軽く、やわらかいです。「かさが欲しい!!!!!」「厚くしたい!!!」という人におすすめです。表紙の用紙を180k以下にすると、厚い本でも手が疲れません。
経年劣化という声もありますが、保存状態にもよりますが5年経過した本でも傷みなどはなく、そのままです。しかし、文庫で300ページなどのボリュームのある本にこの用紙を選ぶと、市販のペーパーバッグ本のようになるかもしれません。
書籍用紙の薄さ比較
各印刷所さんで取扱いの書籍用紙のうち、厚みのmmが確認できたものを表にまとめています。「同じ用紙かな?」と思うものもあるため、今後分かり次第改定をおこないます。
ライト書籍クリーム50 | 0.08mm コミックモールさん すごく薄い |
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淡クリームキンマリ62 | 0.085mm ブロスさん つるつる |
書籍用紙淡クリーム62 | 0.089mm 栄光印刷さん |
ライト書籍クリーム55 | 0.09mm コミックモールさん |
淡クリームキンマリ70・クリーム書籍72.5・書籍用紙70 | 0.10mm |
シフォンクリーム・書籍クリーム・書籍ホワイト・美弾紙ノヴェルズ・淡クリームキンマリ90 | 0.12mmくらい 上質90k目安 一番多い厚さ |
ラフクリーム | 0.13mm ねこのしっぽさん |
ニューシフォンクリーム | 0.14mm プリントキングさん |
書籍ナチュラル60・書籍バルギー | 0.15mm 大陽出版さん、丸正インキさん 上質110kくらいの厚さ |
しかし、厚みは同じでも、コシの有無で読みやすさが変わります。A5・文庫などのサイズ、ページ数も頭に入れた上で用紙を選びましょう。さわった感じ、めくりやすさなども、比較をする大きなポイントになります。指に馴染む用紙を選ぶには、実物を触るのが一番です。用紙見本を取り寄せたり、手持ちの同人誌で研究したりすることをおすすめします。
書籍用紙のおすすめの選び方
個人的な主観ですが、規格・ページ数で分けています。
A5 | 文庫 | ||
~100ページ | 0.12mm以上 | 0.12mm以上 | かさがあった方が読みやすい |
~200ページ | だいたい何でもOK | ||
~300ページ | 0.10mmくらい | 0.09mmくらい | そろそろ薄くすることを考えてみる |
300ページ以上 | 0.10mm以下 | 0.09mm以下 | 左手が疲れてくるので、やわらかくて薄いもの |
見栄え的に厚い本はやはりかっこいいです。しかし、特に小説本は、読むのに数時間かかることもあります。読みやすさを考えて、ページ数や規格に合わせた紙の厚さとやわらかさ、めくりやすさなどを考慮することをおすすめします。
- ページ数が100ページ未満のときは、かさのある用紙がおすすめ。A5では、手に持った時にしっかりとするようにコシのあるものを
- 厚くなってくるにしたがって、やわらかい用紙にしてみる
- A5に比べて文庫本は特に、薄さと柔らかさがポイント ※かたい紙だと開きにくくなって真ん中が読みづらくなる
小説パックで違う紙を使ってみたい!
小説パック(文庫本パック)を設定してくれる印刷所さんが増えてきました。小説本でのパックで使える用紙は、書籍用紙であることがほとんどです。しかし「ちょっとピンクにしてみたい・・」など、そういうこともあるでしょう。
その際は、いくつか方法が考えられます。
- 小説パックではなく、通常のコミックスと同じパックで色つきの用紙(コミックルンバブルー・美弾紙フィジーなど)が使えるものに変更する
- 紙替え料金追加でできないか、印刷所さんに問い合わせる
これらの方法を試してみることをおすすめしますが、まずは印刷所さんに問い合わせが一番です。美弾紙フィジーで80ページの小説を作った経験がありますが、特に読みにくさは感じません。ルンバのピンクもブルーも、うっすらとした色なので、文字が読みづらいということは無いでしょう。
余談:小説本の表紙の厚み
小説は、漫画に比べて読む時間が長くなることが多いので、なるべくしなりやすく、薄いものがおすすめです。
- A5、文庫ともに上質135~アートポスト、ホワイトポスト180くらいまでがおすすめ
- 文庫の場合は特に、表紙に直接PPをかけたり、表紙+カバーの場合は、本体表紙の用紙を薄くする
- カバーの厚みは、コート110~135くらいまでを目安に
B5サイズで80ページ未満くらいであれば、200k、220kの用紙にPPでも問題無く読めますが、小説はA5やB6m文庫サイズであることがほとんどです。その際、厚い用紙やコシの強いを使うと、広げにくく、ノドの部分が読みづらくなってしまいます。
表紙の用紙はなるべく薄く、またはしなりやすいものを、を心がけることをおすすめします。
まとめ
- 自分の出したい本の内容や、作画の傾向によって用紙を選んでもよし!
- できるだけ紙見本を取り寄せて、触って決めよう!
- 本文と表紙の厚みのバランスを考えよう!
- 「○kg」がそのまま紙の厚みではない!「mm」を必ず確認!
数多くある本文用紙から、お気に入りの用紙を選んで、楽しい同人誌作りに役立ててください。