印刷コラム

上質紙?コミック紙?同人誌印刷の基本的な本文用紙

印刷所さんに印刷をお願いするときは、表紙と本文の用紙を選びますが、基本セットとして決められていることもあれば、パックに含まれる数種類の中から選ぶこともあります。

そんなとき「上質?コミック紙?うーんよくわかんない!」と適当に選んではいませんか?ここでは、同人誌印刷所さんで多く使用されている「基本用紙」をリサーチしした結果よく使われている紙と、その特性についてご紹介します。

このページは、2ページに分かれています。1ページ目は主にコミック用、2ページ目は小説用です。

※これらは種類・厚さともに「よくある」紙であり、「どの印刷所さんでも共通して取り扱っている紙」ではありません。

用紙の説明の前に

これだけは知っておきたい専門用語

斤量(きんりょう)

紙の厚さのこと。70kg、90gkなどで表されます(kだけの場合も)。

kgは、その紙が、決められた同じサイズで1000枚あったときの重さです。ほとんどの印刷所さんで「四六判(しろくばん)788mm×1091mm」での重さで表記しています。しかし、たまに「菊判(きくばん)」で表記されていることもあります。

四六判での表記 菊判での表記
110kg・・→ 76.5kg
135kg・・→ 93.5kg

だいたいの用紙の厚さのイメージは以下のとおりですが、用紙の特性によって変わることもあります。コーティングをしていたり、厚めでもふわっと軽いかさ高の用紙もあるためです。そのため、○kだから○mm、とはっきり決まっているわけではありません。だいたいの目安です。

「上質紙で言うと○kの厚さくらいかな」と何となく覚えておけば分かりやすいです。

具体的な厚みは、各印刷所さんでの厚み表記、または背幅計算機などを使って確認してください。

上質55・色上質薄口・コート90 チラシくらい
上質70・上質90・色上質厚口/厚口・コート110 お札くらい~カタログ、パンフレット、書籍本文など、同人誌本文にも一番よく使われる厚さ
上質110・色上質厚口・コート135k ポスター~雑誌の表紙くらい。コピー本の表紙、文庫本のカバーにおすすめ。同人誌の本文としても使われる
上質135・色上質厚口・アートポスト180 一般的なハガキくらい。同人誌の表紙によくある厚さ
色上質厚口・アートポスト220・ミラーコート220 厚めのポストカードくらい。同人誌の表紙に追加料金でよく使われる

アートポストに似た用紙でよく表紙に使われるものに「ホワイトポスト」があります。アートポストよりも白みが強く、コシがある用紙です。

本文用紙としてよく使用される紙

上質紙

  • 化学パルプ100パーセントの純度で作られた、上質な用紙
  • 表面にコーティングはされていない(非塗工紙)
  • メモ帳、書籍の本文など、用途は多岐にわたる
  • 同人誌本文用紙の基本として使用されることが多く、真っ白い

上質紙は、最もよく使われている基本的な用紙です。見た目も白く、さらさらとした手触りで、同人誌の本文の中では滑らかな方です。70kと90kが基本料金やパックに含まれることが多く、110kになると追加料金がかかることが多いようです。

本文に一般的に使用される上質紙は、はっきりとした白さがまぶしく、手触りは滑らかで、高級感のある本になります。

しかし気をつけたいのは、上質紙は乾きにくいという点です。表面に塗工がされておらず、繊維がぎゅっと詰まった作りなので、空気を含ませたコミック専門紙などと比較すると乾きがゆっくりです。急ぎの原稿では、1ページ全部ベタなど、大きなベタを避けることをオススメします。

また、真っ白なので、白と黒の差がはっきりと出過ぎてしまうかもしれません。しかし逆に、ベタをくっきりと強く見せたい!という人にはおすすめの用紙です。表面が比較的滑らかなので、細かいトーンの再現性も高いです。

はにわくん
はにわくん
全面ベタは印刷屋さん泣かせだよ!!
パグくん
パグくん
もういっそ黒い紙はさんじゃえ

長い時間文字を読むにはクリーム系の用紙が良いとされているため、長編の小説にするなら、うっすらと色のついた書籍用紙を選んだ方が良いでしょう。

上質紙はコシがあり、重さもあるので、100ページを超える本に110kなど厚めの上質紙を選ぶと、頒布時に腕と腰が死にます。厚い本のときは、薄めの用紙、もしくはかさ高の軽いものを選ぶことをオススメします。

はにわくん
はにわくん
腰が死ぬぞ!!!!
パグくん
パグくん
気をつけろ!!!!

気をつけたいのは、上質紙はコミック系の用紙よりも表面が滑らかなため、オンデマンドではテカりが目立つ傾向にあります。印刷所さんによってはマットに仕上がりますが、念のため見本を取り寄せて確認しましょう。

  • 真っ白で高級感のある用紙!
  • 比較的つるつるすべすべしていて、コシが強い
  • インクが乾きにくい(オンデマンドでは関係ない)大きいベタに注意
  • 細かい線やトーンもはっきりくっきりパキッとした印象になる
  • 100ページを超える厚い本に使う時は90kまでを目安に

美弾紙

美弾紙は、コミック本・同人誌のために特別に作られた用紙です。そのため、一般には流通していません。契約をした同人誌印刷所さんだけが使える用紙で、北越紀州製紙さんの、長岡工場と新潟工場で作られています。

それなりにコシがあるのに軽くてかさがあり、薄い本でも安心。色のついている用紙もあり、同人誌作りを楽しくしてくれる用紙です。

美弾紙ホワイト

美弾紙の定番です。88kの軽さで厚みは上質90~110の間くらい(110に近い)。ほんのりとクリームがかったオフホワイトで、優しい印象。漫画におすすめです。

美弾紙クリーム

黄色がかった色味で、やわらかい印象の用紙です。漫画にも小説にも使えます。厚みはホワイトと同じです。ただ、ノベル系の用紙よりもコシがあるので、100ページを超える時はクリームではなく、漫画では「ライト」小説は「ノヴェルズ」をおすすめします。

美弾紙フィジー

うっすら水色の、爽やかな色味です。フィジーの用紙に濃いブルーのインクの漫画など、工夫しても良いですね。用紙追加料金がかかることが多いです。

美弾紙コスモス

淡いピンクの本文用紙です。フィジーと同じく、追加料金がかかることが多いです。くりえい社さんでは、パックによってはフィジーとともに料金内に含まれています。また、両方とも小説の本文としても大丈夫なので、内容に合わせて利用してみることもおすすめします。

フィジー・コスモスはホワイト・クリームよりも薄い印象なのですが、印刷所さんによってmm表記が異なるため、各社さんのサンプルを比較して追記します

美弾紙ライト

美弾紙ホワイトよりも少し薄く、生成り感が強くなっています。「薄い・軽い」のライト。上質90に近く、ノヴェルズよりもインクの乾きが早いので、漫画の人にはライトをおすすめします。

美弾紙ノヴェルズ

小説におすすめの用紙です。厚みは上質90kくらいですが重さは63k。軽く、めくりやすく、クリーム色がかっているので可読性に長けています。ライトとノヴェルズで悩むことが多いですが、小説の人にはノヴェルズをおすすめします。もちろん漫画でも使えますが、ベタが多めの原稿は避けた方が良いでしょう。他の美弾紙系と比べてベタのノリは綺麗ですが、乾きにくいです。挿絵に使用するくらいなら問題ありません。

コミックルンバ

こちらも、オリジナルのコミック用紙です。製造は王子製紙で、美弾紙と同じく色の展開もあります。軽く、めくりやすく、コミックとしての用紙を追求して作られています。緑陽社さん、サンライズさん、ホープ21さんで使えます。他にもありましたら追記します

コミックルンバ ホワイト

上質90と110の間の厚さで、重さは84kととても軽いです。透明感のある白い用紙で、裏抜けなどが無いように開発・改良がされています。

コミックルンバ クリーム

クリームの色味が強く、ソフトな印象です。目にも優しいので、ルンバ系で小説であれば、クリームかナチュラルがおすすめです。

コミックルンバ ブルー/ピンク

爽やかなブルーとピンクの用紙です。この用紙に、色刷りをしている方のご本をよく見かけます。

コミックルンバ取扱いの緑陽社さん、サンライズさん、ホープ21さんでは、ルンバブルー・ルンバピンクはパック料金に含まれています(2018年8月現在)。そのため、本文用紙に色の紙を使いたい!という人は、この用紙が使える印刷所さんを選ぶのも方法のひとつです。

コミックルンバ ナチュラル

他のコミックルンバよりも少し薄め。厚さは上質90くらいで重さは70.5。色も生成りがかったナチュラルカラーなので、小説や、少し厚い本におすすめです。

その他の用紙で多いもの

コミック紙

アドニス系

ラフな手触りの用紙で、中質紙に属します。アドニスラフが多く、コミック紙と呼ばれることもあります。59.5kで0.145mmと、ほぼ上質110くらいの厚みがあるので、かさが欲しいときに向いています。

バルギー系(ハイバルギー・スーパーバルギーなど)

軽くて厚く、乾きやすいのが特徴で、ざらっとした手触りのコミック向き用紙です。ハイバルギーの品揃えは、日光企画さんが豊富です。新ハイバルギー(ナチュラル・ブルーグレー・クリームピンク)がスタンダードで使えます。

他にも「フロンティ」「コミック紙」などと呼ばれる用紙がありますが、コミック系の用紙は、空気を含んでいるので「軽い・厚い・ラフ・乾きやすい」と覚えておくのが良いでしょう。

モンテシオン

たっぷりとした厚さでとても軽い用紙です。やわらかい白色で、69kで上質110と同程度の厚みがあります。若干表面に微塗工加工がされていて、印刷の再現力が高いです。

この用紙は、日本製紙石巻工場で開発されています。東日本大震災復興支援商品です。

はにわくん
はにわくん
日本製紙石巻工場の復興ドキュメント本があるからぜひ読んで欲しい
パグくん
パグくん
被災半年で復興した奇跡の話と言われているよ

モンテシオンには、姉妹品でモンテルキアという用紙があります。モンテシオンよりもすっきりとした白色で、同じく表面に微塗工加工がされた用紙です。69kの軽さで上質90~110の間くらいの厚みがあり、かさ高用紙として人気があります。

はにわくん
はにわくん
サンライズさんで、期間限定でモンテルキア の取り扱いがあるね
パグくん
パグくん
気になる人は資料請求してね!

コート

あまり同人誌の本文に使われることはありませんが、フルカラー本・口絵など、カラーをきれいに出したい部分に使われることがあります。

パルプの繊維を包むように表面をコーティングしているので、手触りはつるつるとしています。インクはしみこまず、紙の上に残るので、乾きにくいのではと思われますが、その逆です。用紙にしみ込まないことでインクはそのまま乾くため、チラシなどのスピード印刷にも向いています。

光が乱反射せずにそのまま色が目に入るため、カラーの再現性が高く、カラーの用紙として使われます。上質紙をベースに塗料をコーティングしているため、同じ厚さの用紙でも、コートの方が重く、コシがあります。(コート135=だいたい上質110)

マットコート

こちらも、コートと同じようにカラーでの本文や口絵に使われることがありますが、あまり同人誌では見かけません。上質紙をベースに、マットなコーティングがされています。コート紙よりも表面の光沢をおさえた加工です。

しかし、コートとは逆に、非常に乾きにくいです。用紙の表面がマットなため、インキを約40パーセントほど多く盛らないと色がはっきりと出ないのと、コーティングのPH値の関係でインキが乾きにくくなっているためです。

手触りはしっとりとしていてコシもあり、高級感があるため、さまざまな用途で人気があります。名刺などに使われることが多いです。

 

次に、小説本向けに書籍用紙を紹介します。

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